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No.2 「トイレの神様」 西山 和人 (比文'12)No.2 Toilet God Kazuhito Nishiyama (College of Comparative Culture 2012)

トイレには、神様がいる。西山和人

 「それはそれは綺麗な女神様が~」という例のやつとは違う。彼(彼女?)は、私がお腹を壊した時、私の前に現れるのである。

 ひどくお腹を下し、慌てて駆け込んだトイレの中。早く収まってくれとすがるような気持ちで、私は神に懺悔し、祈る。もう悪いことはしません。お願いします、助けてください――。腹痛が収まってトイレを出る頃には、トイレの神様も懺悔したこともケロッと忘れてしまうのだから、何とも都合のいい話である。

 私の妄想の中だけの話ではない。私もずいぶん長い間、こんなことをしているのは自分だけだと思っていたのだが、話をした友人たちは少し興奮気味に同意してくれた。三人居て三人が同じようなことをしていたのだから、どうやらトイレに神様が居るのは本当らしいと結論付ける他なかった。神の存在を確信した私たちは、「トイレ教」の開祖となり、布教活動に励んできた――というのはもちろん、嘘だ。

 冗談は置いておくが、そもそも日本人の宗教観はなかなかに都合がいいような気がする。正月は神社で初詣、お盆や彼岸は寺へ墓参りに行き、クリスマスはパーティで盛り上がる。既に言い古された話だけれど、私も含めて、日本人は自分たちが思っているほど「無宗教」ではないのである。トイレには神様が居るし、何ならお米一粒には七人も居るし、亡くなった親戚は仏様になる。宗教だ、と言われればなんとなく違和感を持ちもするけれど、少なくとも、ふとした瞬間や日常の節目に、たしかに私たちは神や仏の存在を意識している。

 正月、私も例に漏れず神社で初詣をして、御神籤をひいた。正確な文言はもう覚えていないけれど、「自分の都合のいい時だけ神頼みっていうんじゃダメだよ。普段からきちんとお参りして、感謝の気持ちを忘れないように」というようなことが書いてあったように思う。うーむ、たしかにその通りである。緊急時に、すがるように「トイレの神様」に祈らなくてもいいように、今日からは少しだけ気合を入れて、トイレを磨いてみることにしよう。

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