1. ホーム
  2. 学生のページ
  3. リレーエッセイ
  4. No. 21 「シラノ・ド・ベルジュラック」 M. O. (比文‘15)

Students’ Page学生のページ

No. 21 「シラノ・ド・ベルジュラック」 M. O. (比文‘15)No.21 Cyrano de Bergerac M.O. (College of Comparative Culture 2015)

17世紀のフランス。ガスコン青年隊の剣客シラノは詩人で哲学者で、音楽家で理学者。しかし彼にはたった一つの隠せない欠点がある。それは鼻!醜悪に偉大な、鼻!……ゆえに、従妹ロクサアヌへのひたむきな恋慕を秘密のものにする。そんな折、ロクサアヌに呼び出されたシラノは、彼女の想い人が、同じ青年隊に属する匂い立つほどの美男クリスチャンであと告げられる。クリスチャンもまた彼女に想いを寄せていた。しかし彼は花の顔とは裏腹にことばの貧しい青年であり、彼の恋心を打ち明ける術すら知らぬ!見かねたシラノは自らがロクサアヌに宛てて綴った恋文を手渡し、クリスチャンが書いたものとしてロクサアヌに送るように言う。MO

場面は夜、ロクサアヌ邸のバルコニーでクリスチャンは愛を謳う。しかし彼には文才がない、もちろん普遍で凡庸な言葉しか出てこない。ロクサアヌが幻滅を示し始めたその時、シラノがクリスチャンに成り替わり美しい賛辞に彩られた愛の言葉を叫ぶ。彼女はその言葉たちに陶酔しクリスチャンに接吻を許可する。

しかしロクサアヌに恋するもう一人の男、ド・ギッシュ伯爵の嫉妬により彼ら二人は戦場に送られてしまう。クリスチャンも知らぬ中、戦場でもシラノはクリスチャンとしてロクサアヌに恋文を送り続ける。恋文を受け取ったロクサアヌは戦場へ慰問に赴く。ロクサアヌが愛しているのは今やクリスチャンの容姿ではなく、日々送られてくる恋文がかたどる人柄であると語る。彼女の告白に絶望したクリスチャンは前線に飛び出て戦死する。

クリスチャンを失い修道院で密やかに暮らし始めたロクサアヌのもとにシラノは土曜ごとに訪れ、その週にあった様々なことを豊かに語った。とある土曜日、シラノが修道院に向かう途中で彼の敵対者に、頭に材木を落とされ重傷を負う。この日ロクサアヌは在りし日のクリスチャンからの恋文をシラノに初めて見せる。シラノはその手紙を読み続け、ロクサアヌはやっとその声がいつかバルコニーで聞いた声だと気づく。死を目前にしてはじめて自らの恋心を告白するシラノ。ロクサアヌの腕に抱かれ彼は息を引き取る。

 

 どの部分も捨てられなくて、あらすじが長くなってしまったのですが、こちらはエドモン・ロスタンが書いたフランスの戯曲で、実在した剣豪作家を主人公にした作品です。大分昔に読んだものなので、これを書くにあたって読み直したり調べたりしましたが、やはり変わらず心揺らされるお話でした。シラノがクリスチャンに渡していた手紙は、偽の言葉などではなく正真正銘の恋文!想い人のもとに、届いているのに届いていない!しかしそれはシラノ自身の心意気……彼は理念を持ち信念に生き、そして死んだのです。

 これは物語の定義では悲恋に分類されるそうです。悲恋、ということは悲劇?バッドエンドになるのでしょうか、それともまた別の話なのでしょうか。どちらにせよ、わたしはこれを悲劇だとは思いません。逆境の中、自らの生きざまを貫いたシラノ……この結末以上に彼の精神を尊重できるものはない気がします。

 結局何が言いたいのかぼやけてしまいましたが、告白を控えた方がもしいらっしゃいましたら是非読んでみてください!シラノの台詞はどれをとってもうっとりするほど滑らかで、気高く美しい宝石です。そして、もし恋文での告白をお考えで、なおかつ筆が乗らないという方!僭越ながら、シラノに憧れた、不肖このわたくしめが代筆させていただきます。

 

 

 以上です、ステキなバトンを渡してくれたアイドルさん、ありがとうございました!お次はわたしがいくら遅刻しても怒らずにいてくれる優しい優しいT. K. くんです。

 

アンケート

筑波大学 比較文化学類ホームページをより良いサイトにするために、皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
なお、この欄からのご意見・ご感想には返信できませんのでご了承ください。
In order to improve the website of College of Comparative Culture at the University of Tsukuba, we would like to hear your opinions and thoughts.
We cannot respond to your opinions and thoughts. Thank you for your understanding.

Q.このページはお役に立ちましたか?
スマートフォン用ページで見る