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「比文から、(逆風に負けず)大学院へ!」From the College of Comparative Culture and on to Graduate School (Don’t Lose to Adversity)

―――比文の教員の馬場美佳です。今日は、この春に比文を卒業し、筑波大の大学院に進学した3人に集まってもらいました。世間では大学院について厳しい報道もありますが、実際のところどんな感じなのか話せるとよいなと思います。

皆:よろしくお願いします。

 

―――ではまず、自己紹介からいきましょうか。

高倉(以下T):高倉駿です。3月に比文を卒業し、いまは大学院の国際地域専攻の修士一年です。専門は歴史学で、特に中央アジアのことをやっています。あまり聞き馴染みのしない地域かもしれませんが(笑)、現地語の史料を読む日々です。ASIP【注1】に属していて、今年の夏からウズベキスタンに留学予定です。

―――そのテーマは卒論から?

T:はい。文化人類学コースだったんですが、塩谷先生に指導していただいて、「新疆・フェルガナ間の越境の諸相:コーカンド・ハーン国史料から見たカシュガル・ホージャ家の活動」という卒論を書きました。

山下(以下Y):山下史雅です。比文では日本研究コースで、現在は歴史・人類学専攻で日本史を学んでいます。専門は日本近世史で、ざっくりいうと農村における飢饉からの復興における指導者の役割について研究しています。

篠原(以下S):篠原弘樹です。比文では文化地理学コースで、いまは生命環境学研究科で人文地理を学んでいます。生命環境なので、いちおう括りは理系です。卒論はマレーシアに住む日本人について現地調査して書きましたが、大学院ではラテンアメリカを研究してみようと思っていて、8月からメキシコに留学し、新興国での観光開発について調査する予定です。 

T:あ、おれの自己紹介がいちばんふわっとしてる(笑)。

―――では私も。私も比文を卒業し、そのまま筑波の大学院(現在の人文社会科学研究科文芸・言語専攻)に進学して、日本文学を学びました。5年一貫制【注2】の大学院で、特に明治期の尾崎紅葉について研究し、8年かけて博士号を取りました(笑)。筑波には13年お世話になりましたね。その後、北九州市立大学で10年勤め、2年前に筑波に戻ってきました。

 院座談会1

大学院を目指すきっかけ

―――みなさんはどの段階で大学院へ行こうと思ったんですか?

T:大学に入ったときは4年で卒業するなら好きなことをしようと思って、歴史を始めました。でも、2年の時に中央アジア史をやりたいと先生に言ったら、まず言語を勉強するようにと言われて…。ペルシア語、ロシア語、トルコ系の言語、それからアラビア語も。これは4年で済まないぞと(笑)。まあもともと研究者みたいなものへのあこがれもあったので、気がついたら大学院という道を選んでました。それからASIPに入ってしまったのも大きかったですね。ASIPは、本来は修士まで行くのが前提だったので。

―――なるほど、大きなテーマを見つけてしまったら逃れられない、運の尽きって感じですね(笑)。いや、その突き詰めていく姿勢というのはだれでもできることじゃないと思います。大学4年行って、就職して、みたいに区切る人がほとんどだから。でも私もそうだけど、やりたい何かがあるときって、ほとんど人の忠告を聞かないですね。恋愛みたいな感じ?(笑)

S:僕も2年の終わりにASIPに入って、そこでもうメキシコ留学を考えてました。でもASIPだと、大学院での専攻が決まっていて、その専攻だと地理はないんです。僕はもっと地理をやりたいなと思ってて、迷ったんですが、結局ASIPからは抜けて、生命環境の方に進学しました。ということで、もう少し地理をやりたいという思いと、そもそもASIP生だったので、自分にとって修士までは規定コースだったというので、院進学しました。

―――大学院に行く人は、今いる場所から自分のやりたい方に「えいやっ」とジャンプしてしまうんですよね。その時楽しく飛べる人であることが大事だと思います。

TASIPに来る人って、留学に行きたいタイプと勉強したいタイプがあって、前者のなかには学部で留学して満足してしまう人もいますね。大学院行きたい人はASIPを手段と考えているように思います。

Y:僕は二人と違って、実は高校の時から大学院に行きたいと思ってました。バカだったから、学者になって大学入試に自分の文章を載せるんだと(笑)。でも入学してちょっと違うかなと思って、就職も考え始めたところで、恩師(山澤先生)と出会ってしまって。大学院も考えていると言ったら、調査に連れて行っていただいたり、大学院の授業にもぐらせてもらったりと、いつのまにか院進学が既定路線になっていって。3年になった時に絶対行こうと決意しました。

―――確かに教員との出会いってありますね。比文は教員に対する学生の比率が低いから指導が手厚くて、昔ながらの師弟関係ができやすいかもしれないですね。

Y:そうなんですよね。冗談で「親子」みたいに言ってます(笑)。

―――でも、みんな意外と早いうちから考えていたんですね。

Y:そもそも大学院がどういうところか知らないから最初は漠然と考えているんですけど、それがだんだん具体的になっていく感じですね。

―――もっと勉強したいという思いが勝って、大学院に進学する感じ?

皆:いやー、そういうわけでもないんですけど(笑)。

 

大学院での生活

Y:大学院生活は意外と忙しいですね。何か課されているわけではなんですけど、自己との戦いというか。ちょっとマゾっぽいんですけど、コテンパンにされてもついていく、みたいな(笑)。

―――ちなみに、みなさんどんなふうに一日を過ごすんですか?

Y:そうですね、4時半に起きて、5時~8時までバイトして、家に戻って身支度して、9時に図書館に来ます。それで授業でたりて、昼飯を挟んで67時ごろまで大学にいます。そこで一度帰って夕食、その後9時~12時までは院生室で勉強して、帰って寝る感じです。

皆:え~!

Y:まあこれは忙しいときの話です。

T:僕は日によって違うんですが、でもなぜか学類生の時より朝起きられるようになりました(笑)。午前中の授業が多いからかな。だいたい9時に起きてご飯食べて、家を出て院生室に来てしばらく椅子に座ってぼーっとした後、メールチェックしたり、予習したりします。やっぱり大学院に入って授業が重くなったんで、ちゃんと予習とかしないとという感じです。それで授業に出て、終わって夕食とって。院生室に1011時頃までいて。帰って寝ます。家だとだらだらしちゃうんで、極力家にいるのは食事の時と寝るときだけにしようと思ってます。

―――院生室があるとみんな夜までいるよね。私の頃も夜中の12時を超えても発表の準備が終わらないとかよくあった。それと、いまは図書館が12時まで開いているから便利になったよね。

Y:院生室にいると、妙な連帯感ができるんですよね。そんなにしゃべったりはしないんですが、あああの人まだいるからこっちも帰れない、みたいな。

―――。そうそう。うん、切磋琢磨。

S:僕のところは、進学してはじめの顔合わせのとき、博士課程の人に、先輩からアドバイスをもらえたりするし、なるべく院生室に来るようにするといいよ、と言われました。

―――院生になるとあまり先生が手取り足取りというわけにもいかないし、またちゃんと鍛えなきゃみたいなことで厳しく接することもあるから、周りからアドバイスもらったりする場は必要ですよね。

S:ほんと、毎日があっという間です。いま自宅から通学していて、片道1時間かかるんですが、火、水、木に1限あるので7時半に出て、という生活です。それと大学院に入って、学会の手伝いとか、意外と授業以外にもやることがあるなと思いました。学会の資料作成とかやっていると、一日がすぐ終わってしまいます。

―――確かに、私も院進学して最初の2年は記憶がないぐらい忙しかったな。授業があり、修論があり、で…。

T:僕らもゼミの準備に追われて自分の研究ができないんじゃないかと思うことがあります。

―――でも、それはまた学年が上がると変わってくるから。教員の立場からすると、院生時代ってひたすら研究のことを考えていられる、至福の時っていう感じ。

Y:あ、でも僕は専門の勉強をしっかりしないとというのと、人間としての基礎がないといけないなあ、と思ったりもします。そうじゃないと、史料を読んでいてもそこに出てくる人のことがちゃんと分からない気がして。

S:僕はフィールドワークが大好きで、実際に人と接するのがとても楽しいです。

T:僕はフィールドが遠くてなかなかフィールドワークに行けないので、留学を楽しみにしてます。せっかくの機会なので、史料に出てくる地域の現在の様子をあちこち行ってみてきたいと思います。それと、去年から筑波大内部だけでは語学が学べなくなったので他大にも授業を受けに行っているんですが、その大学では筑波なら自分だけしか勉強していないような語学を何人も学んで、史料の解釈の仕方について緻密な議論をしているので、ちょっと焦りますね。筑波は気をつけないとお山の大将になっちゃうので。

―――逆に、筑波のいいところって何かありますか?

T:大学、研究室の出入りが時間制限されないのはありがたいです。

Y:大学町でコンパクトだから、学内のいろんな所属の人と会いやすいのはいいですね。図書館も使いやすいし。それから、教員との距離が比較的密だと思います。

 

比文生の「こだわり」と大学院 

―――勉強していて、新しいものを発見する喜びはありますか?

T:史料を読んでいく中で、それなりにあります。大発見ではないですけれど、当時の人々  のことがだんだんわかってくるのは面白いです。

―――比文の学生って、自分なりに整理して楽しむ、オリジナルなことを求める学生が多い気がしますね。

Y:比文の人は、他学類の学生と比べても、こだわりを持っている人が多いですよね。卒論の題目とか見ると一目瞭然。

S:わかる~。

T:あれはこだわりのかたまりだよね。誰もテーマがかぶらない。

Y3月に「比文バトン」というイベントでいろんなコースの人が卒論発表したんだけど、もうみんなバラバラ(笑)。同じ学類なのに全然違う。

―――ははは。私も、パンフレットに10人分載せるから選んでください、と言われたけど、バラバラ過ぎて選ぶのが大変だった。

S:だから、同じ学類なのに大学院の進学先も様々なんですよね。

Y:他と違って、大学院とそのままつながっていないから。

―――じゃあ、それぞれの進学先で、別学類の同級生と会う感じ?

Y:そうです。そこで(こっそり)比文のプライドをもって、他学類出身者に負けないぞ、と思ったりします。

 

大学院の授業

―――大学院の授業はどうですか?何となく筑波は、狭い専門ばかりでなく、広く教養を身につけなさい、みたいな授業配置をしているようなイメージがあるけれど。

T:国際地域は留学生が多くて、授業も半分ぐらい英語で行われている印象があります。いずれにせよ、自分の専門のコースだけでは単位が取り切らないから、中東・北アフリカの授業を取ったりもします。自然と副専攻ができる感じですね。

Y:僕も生命環境に授業取りに行ってますね。大学院でも他専攻の授業を取りやすい気がします。

―――それは取りやすくなっているのかも。昔は自分の先生以外のを受けに行くと「道場破り」みたいな感じがあったけど(笑)。まあ、教員数の変化もありますしね。

 

大学院進学事情

―――同期ではどのぐらい大学院進学してますか?

Y:他大学に行ったとか、教育学の方に行った人も何人かいて、…合わせると意外と同期の1割ぐらいになりますね。

―――山下くんみたいに、高校生から院を考えている人は珍しい?

Y:いや、1年の時はいるんですけれど、だんだん就職に心変わりしていったりで減っていく感じです。

―――留学生だとはっきり最初から目的が大学院進学という人が目立ちますが、日本人は少ない気がしますね。

Y:院のハードルが高いのかな。まず知らないという人が多いです。

―――大学に入ってから大学院の情報ってあった?

T:最初は何も知らなかったです。僕の場合先輩のツテで、院生と話したりしてだんだん知っていく感じでした。

S:学類生ってあまり院生とのつながりがないんですよね。

Y:理系だと院に行くのが当たり前だから、また別だと思いますけど。

―――他大だと大学院と学部の共通授業があって、そこで接することもありますね。

S:筑波でも理系ではあるみたいです。

TY:実は僕らも学類生の時から大学院の授業に出てました。

―――ところで皆さんの場合、院進学について家族の反応はどうでした?

Y:親にいろいろ言われました。前からずっと言っていたんですが本気にしてなかったんですね(笑)。進学が決まって準備もした3月に正座してけっこう真剣に話しました。お金のこととか。

T:僕は特に親とか親戚からの反対はなかったな。気楽な感じで、おお行け行けと。

S:親よりも、同級生の反応が厳しいですね。将来どうすんの?と言われたり。文系だから、もう研究者しかないんじゃない、とか。職あるの?とか。

―――そうか、同級生の目が厳しいっていう反応はちょっと予想してなかった。

Y:同級生同士でお互いをどう思うか、「キャラ」みたいなのもありますね。就職する人たちのなかで、大学の後は就職が既定路線だと思っていて、それ以外を考えていない人もけっこう多いです。そういう中であえて「院進学」というキャラを選択するって、なかなか勇気がいりますよ。

S:実際、同級生との比較に一番不安を感じるね。

Y:大学院って、この問題を解決しなければ生きていけない人が行くところだと思うんです。でも就職できないから院に行くんだと思う人がいるのは悔しいですね。

―――でも、大学院に行かなくても、結局研究者っぽい感じで働いている人もいますね。

Y:比文生はやっぱりこだわりがあるんですよね。

 院座談会2

将来について

―――今後について考えていることはありますか?

T:頑張って博士まで取りたいですね。その後、キャリアを積んで研究者になりたいですが、最悪、大学の教員でなく、在野の研究者でもいいかなと思ってます。

Y:僕も学位を取って研究者になりたいです。でも教員免許も学芸員の資格もあるので、状況によってはそちらに…。

S:僕はいまのところ修士までと思っています。フィールドワークで現地の人との交流するのが楽しいから、現場で働きたいです。国際機関とかも考えています。

―――私の頃から、博士号は研究者になるための運転免許と言われはじめましたが、最近、修士号や博士号の可能性が少しずつだけれど広がりつつあるのかも。昔は大学院に行ったら一般の就職はないと言われていて、実際にさる企業の方から目の前でそう言われたこともあります(笑)。でもいまは院出身でも一般企業に就職する人もいるし、企業の側も受け入れるし、大学院のイメージ、キャリアの捉え方が変わりましたね。

 

―――これから、どんな研究者になりたいですか?実は私は飽きっぽい性格で、不思議なことに唯一続いたのがこれだった(笑)。自分の関心ある文学についてより深く知ったり、それを広めたりする専門スキルが欲しい、それで自分を作りたいと思って、進んできました。

T:うーん、難しい質問ですけど、歴史学なので、ある部分のことを突き詰めて誰よりも知っている、これだけはだれにも負けないというのを作りたいなと思います。そしてそれを人に伝えられるような…。じつは夢があって。僕の研究をもとに漫画とか小説を書いてもらえたらなって思ってます。自分の研究への熱意とか面白さとか、そういうのをより広い人たちと共有できたらなと。

皆:お~(笑)。でもそれいいね。

―――私も、自分が突き詰めたことがいずれ誰かの役に立ったらいいな、と思いながらやっています。

Y:僕もそういう思いはあります。ふだんから何かしら社会の役に立ちたいと思っているので、研究を通じて、社会を見るときの核となる視点を得たいと考えています。研究者としての専門性のなかで、自分のやったことが何か役に立てばいいなと。江戸時代を通して現代を見通せる、何か言えるような。現代を見るための視点の構築ですね。

S:僕も、社会に還元できるような研究がしたい。地理学だと、先輩でも都市計画、行政とか、政策にも関わる人も多いですし。

―――ではみなさん、世間ではいろいろ言われていますが(笑)、いま語ってくれた夢に向かって、頑張りましょう!

 

 

【注1ASIP:地域研究イノベーション学位プログラム新興国を対象とした地域専門家を育成すべく、学士課程後期と博士課程前期の一貫制教育コースで教育を行う(本来4+2=6年かかるところを、最短で3.51.5=5年間で修了する)。その過程で、新興国における1年間の留学(フィールド調査)と海外インターンシップの実施が義務付けられている。

http://asip.hass.tsukuba.ac.jp/

 

【注25年一貫制:多くの大学院では修士課程(標準的には2年間で修了)と博士課程(同じく3年間)に分かれており、修士課程修了後に再度試験を受けて博士課程に進むが、そうした区別を設けず、5年一貫制で一貫した教育を行うところもある。その場合、多くは2年目ないし3年目に修士論文に当たる中間評価論文を提出し、提出者は修士号を取得したものとみなされる。

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