コース教員自己紹介Faculty Member’s Self-Introduction
(研究業績等はこちらをご覧ください)
徳丸亞木
民俗学を担当している徳丸亞木です。19歳頃から、熊本県阿蘇と五木村での調査を皮切りに九州・山口県を中心にフィールドワークを継続し、本州各地、南西諸島、韓国済州島、全羅南道、中国浙江省などで調査を行って来ました。近年は、文化財行政との関わりで、つくば市内や土浦市内、北茨城市などで祭礼の調査も行っています。各調査地とも民俗誌を記述する事を基本としていますが、個人的な関心は、人はその生活の中で何を信じ生きているか、人が生まれ、生きて、死んで行く事とはどういう事なのか、現代という時代の中で、伝承的な知、あるいは経験的な知とはどのような意味を持っているのか、などにあります。いわゆる信仰伝承、儀礼伝承、祭礼とカテゴライズされる分野について具体的な対象を定めて研究を進めています。今ひとつの関心は、近代を生きた人々の生活経験の記録化であり、戦前・戦中の海外移民の生活経験に関わる語りの記述を継続しているところです。民俗学は、非常に幅広い学問ですが、現に生活している人々と彼らが継承し育んでいる文化そのものを考えるところに大きな魅力と今日的意義があると考えています。
関わった本
■『民俗学事典』 丸善出版 2014年刊行(編集委員・分担著)
学校の怪談を研究された常光徹さんを委員長に、編集委員の一人として3年間編集と執筆に関わりました。読める事典として企画しましたので、民俗学について基本的でありかつ新しい知識を得る事ができる事典です。高値なので、図書館で手にとってみて下さい。
■「巨文島生活記」『山口県史 民俗編』山口県 2010年刊行(単著)
戦前の日本漁村から韓国巨文島へ移民し、日本人集落を形成した木村忠太郎の孫にあたる方からの聞き書きを「語り」を生かした形で記述した著作です。「語り」を単に資料として記述するのではなく、そこ込められた感情・情緒に目を向けて纏めています。
■『講座 日本の民俗3 家の民俗文化誌』 吉川弘文館 2008年刊行(分担著)
日本の民俗学に関わる多くの研究者が集まって編集した民俗学の講座です。私は3巻の「家の神」で家を中心とした信仰に纏わる伝承の継承と、そこに示される生活史的時間認識や歴史認識のモデルについて、具体的な事象を取り上げながら考察を試みています。
■『環境と心性の文化史』上 勉誠出版 2003年刊行(分担著)
環境研究の本ですが、「陸と遠海における海への心性」という章題で、船に祀られる神であるフナダマ信仰を例として、鰹漁漁民の海と陸に対する認識について考察してみました。フナダマやエビスをはじめとする漁民信仰研究は私のメインテーマの一つでもあります。
■『「森神信仰」の歴史民俗学的研究』 東京堂出版 2002年刊行(単著)
私の研究のメインテーマである、森を聖地として祭祀される「森神信仰」についての研究です。藩政期の文書資料と現代の伝承とを基本的な資料として、従来の民俗学研究では祖霊信仰の枠組みで考えられていた「森神」について、その複合的な性格を指摘するとともに、「森神」に纏わる語りに表れる人々の「民俗的歴史観」について論じています。
塩谷哲史
歴史学(中東・中央アジア)を中心に担当している塩谷です。もともと東洋史学を専攻し、現地語(テュルク諸語)やロシア語で書かれた一次史料にもとづく実証研究と現地調査を進めてきました(もちろん今も進めています)。対象地域は中央アジアのウズベキスタン、トルクメニスタン両共和国の国境地帯にあるホラズム地方です。周囲はカラクム、キジルクムという二大砂漠からなる乾燥地帯ですが、ホラズム地方自体は、アムダリヤという中央アジアの大河川の下流域に位置しているため、古代から灌漑農耕が発達してきた地域です。最近私は、20世紀初頭に書かれた灌漑事業に関する一点の古文書から、この地域を生きた、またはそこに足を踏み入れた人びとの考えと行動、その考え・行動を規定するその時代の政治・社会構造や文化的背景、自然環境の変化、そして当時の人たちと現代を生きる人たちとのつながりをどこまで読み取ることができるのか、毎日挑戦を続けています。
中央アジアの歴史は、中東イスラーム世界、南アジア世界、中華世界の歴史、そしてロシアを中心とした東方正教世界を通じてヨーロッパ世界の歴史と、深いつながりをもって展開してきました。ユーラシア大陸全体を視野に入れて歴史や文化を考えてみたい人におすすめの分野です。
関わった本
■『中央アジア灌漑史序説』風響社、2014年刊行(単著)
研究紹介で書いた20世紀初頭の古文書を読み解きながら、中央アジアにおける定住民と遊牧民との関係の変容、ロシア帝国の軍事征服(1860~1880年代)および灌漑開発計画の現地社会に対する影響、そして20世紀初頭の企業家たちによる大規模灌漑開発の試みと失敗の諸要因を検討しました。ソ連期(1922~1991年)の中央アジアは、社会主義体制のもとで開発と環境破壊を経験しましたが、そこに至るまでの現地社会の変容を明らかにしました。
木村周平
文化人類学を担当している木村周平です。文化人類学者としてはわりと異端なのですが、いままでおもに災害について調査・研究してきました(とはいえ、災害というのは自然と社会とのインタラクションの結果として生じるので、人類学の中心的なテーマに通じているのですが)。最初のフィールドはトルコです。大学院時代からイスタンブールに行きはじめ、一番長いフィールドワークでは1年半滞在しました。現地の言葉であるトルコ語を使っていろいろな立場の人と話したり、あるいは活動や生活を一緒にしながら、現地のものの見方を理解しようという、文化人類学的なフィールドワークをしています。おもなテーマは、これから起きると言われている地震に対して地域の人々や行政などがどのように対応しているのか、災害に関する記憶や知識や制度がどのように創り出され、人々の間に流通しているか、などです。そして2011年に東日本大震災が発生してからは、岩手県の大船渡市に通って、復興プロセスについての調査をしています。
関わった本
■『震災の公共人類学:揺れとともに生きるトルコの人びと』世界思想社、2013年刊行(単著)
大学院時代からの約10年間の断続的なトルコでの調査にもとづいて書いたものです。博士論文がもとになっていますが、大幅に書き直しました。自分では記憶について書いた1章、都市計画について書いた4章、住民組織について書いた6章が気に入っていますが、災害についての人類学的な研究を整理した序章が参照されることが多いです。
■『災害フィールドワーク論』(「FENICS 百万人のフィールドワーカー」シリーズ第5巻)杉戸信彦さん・柄谷由香さんと共編、古今書院、2014年刊行(編著)
災害についてのフィールドワークのメイキングムービー集のような本です。防災学、情報学、都市計画学、地理学、火山学、社会学、地域研究、文化人類学など、いろいろな分野の30-40代の方々を中心に書いていただきました。この分野はこういうふうに調査するんだ、こういうふうに現場に入っていき、現場の方々と接するんだ、というのがわかり、編集していてもとても面白い本でした。
■『公共人類学』山下晋司(編)、東京大学出版会、2014年刊行(「災害の公共性」という章を担当)
文化人類学のなかで近年、より社会と関わりを深め、社会の中での重要な問題に取り組もう、という動きが現われています。本書は日本におけるその嚆矢となるもので、多文化共生、難民、高齢者、障がい、人間の安全保障、などの様々なテーマが取り上げられている教科書的な本です。
■『現実批判の人類学』」春日直樹(編)世界思想社、2011年刊行(「『揺れ』について:地震と社会をめぐる実験・批判・関係性」という章を担当)
若手を中心に、新しい理論的な動向も取り込みながらこれからの文化人類学の方向性を示すべく出版された、挑戦的な本です。僕はトルコの事例をもとに、民族誌的に現実を捉えることについて実験的に書いています。
渡部圭一
民俗学を担当している渡部圭一です。日本の伝統的な農山漁村を対象とした調査をしています。地域社会に伝わる由緒書、墓石などの石造物、宗教儀礼で使われる書物、祭りに関わる帳簿など、暮らしのなかの「書かれたもの」を主題にしています。文字資料など、かたちのある「もの」を自分で掘り起こして歩くフィールドワークがわりと得意です。
しばらく博物館の学芸員をしていたので、有形民俗資料(いわゆる民具)と文字資料を相互にからめ、地域的な民具の意味付けを発信する研究に興味があります。また無形民俗文化財の調査事業や自治体史編さんに関わる機会も生かしつつ、寺社の祭礼を支える人びとや自治会など地縁的なコミュニティの来し方行く末の問題について考察しています。
近年では、文字資料の活用の延長上で、地縁社会を基盤とした湖・山・川のコモンズ(資源管理)や災害対応など、自然環境と人間のかかわりを歴史的な視点で再考することを試みています。主なフィールドは、環境社会学や環境民俗学の拠点となってきた滋賀県・琵琶湖周辺地域で、生態学、植生史、考古学、地理学など分野をまたぐ共同研究にも携わっています。
関わった本
■『災害対応の伝統知-比良山麓の里山から』(吉田丈人ほか編)、昭和堂、2024年
滋賀県湖西の比良山麓地域で行われた共同研究の成果で、共著論文が3編収録されています。植生や石材の過剰利用によって荒廃した里山を背景に、雨が降るたび川に流入して被害をもたらす土砂とそれに対する防災の取り組み、土砂が湖岸に形成する砂浜の役割の移り変わりなどをとりあげ、さまざまな分野の研究者と議論しました。親和的で理想的なイメージで捉えられやすい里山ですが、土砂という視点を持ち込むことで、また違った姿をみせてくれます。
■『読み書きの民俗学』(単著)吉川弘文館、2023年
いわゆる「古」文書ではなく、暮らしのなかで生きて使われているモノとしての文字資料をとりあげた論文集です。読み書きというと、できる・できないという識字率の問題として扱われることが多いのですが、フィールドワークで出会う読み書きは暮らしのなかの習慣や集団的に行われる儀礼と切り離せません。近世から近代にかけて読み書きと声の結びつきがさまざまに複雑化してきたことを論じました。
■『オビシャ文書の世界-関東の村の祭りと記録』(水谷類さんとの共編)岩田書院、2018年
関東村落のオビシャという年頭の祭りでは、しばしば「オニッキ」とよばれる文書が作成されます。近世前期から現在まで受け継がれ、ご神体のような扱いを受けることもあります。この不思議な素材との出会いから生まれた共同研究の成果です。関東ではなかなか研究の及んでこなかった、17世紀はじめの祭祀組織のおいたちにも迫ろうとしています。
佐本英規
文化人類学と東南アジア・オセアニア文化研究を担当している佐本英規です。これまで、南太平洋にあるソロモン諸島という島国で演奏されているアウと呼ばれる在来楽器(竹製パンパイプ)の現代的動態について、社会文化人類学的観点から研究をおこなってきました。最近では、ソロモン諸島での調査研究に加えて、日本国内の芸能(島根県石見地方の神楽)や工芸(茨城県笠間市の陶芸)などの現状にも関心を持っています。また、広く芸術や芸能、音楽に関する人類学および隣接諸分野の理論的動向に関する批判的検討に取り組んでいます。
関わった本
■『森の中のレコーディング・スタジオ:混淆する民族音楽と周縁からのグローバリゼーション』 昭和堂、2022年刊行(単著)
■『ようこそオセアニア世界へ』石森大知・黒崎岳大(編)、昭和堂、2023年刊行(分担著)
■『
』小西公大(編)、うつつ堂、2024年刊行(分担著)アンケート
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- 2025年2月2日
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