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No.14 「桜を愛でる日本―身近になっていく桜と新しい桜文化」 S. K. (比文'12)No. 14 On Japan’s Admiration of Cherry Blossoms-Cherry Blossoms Becoming Common and New Cherry Blossom Cultures S.K. (College of Comparative Culture 2012)

日本人と桜。この関係ははるか昔平安時代までさかのぼる。平安時代初め、花といえば梅であった。しかし、嵯峨天皇が一本の桜に心を奪われたことで貴族たちに桜大ブームが巻き起こり、以降桜は日本文化における象徴的な花となったといわれている。

 現代の日本でも桜を愛でる文化は受け継がれている。卒業式や入学式の場で、「桜」というワードが登場することも多いだろう。私も小学校の卒業式で「満開の桜に彩られ……」などというような言葉を口にした記憶がある。果たして、そのとき本当に桜が満開であったのかは疑問であるが…… 私たちは卒業・入学という人生の節目と桜を当然のように、ごく自然に関連付けているのである。日本文化において桜はそれだけ大きな存在であり、日本人にとって身近な植物なのである。日本人と桜の関係性の強さを感じさせるもう1つ例が花見である。桜の季節が近づけばニュースで桜の開花宣言がなされる。桜前線などという言葉も存在する。人々はこの開花宣言を参考に名所の桜の開花具合を知り、満開の季節ともなれば桜の周りは人混みであふれかえる。花見はもともと桜に宿る神に祈りをささげるために行われていた宴とされている。これが時代とともにより娯楽的物へと変化していったのである。現代では、古来の神聖な意味合いはなく、桜の下で酒をのみ、弁当を食べ、仲間とバカ騒ぎをすることが、日本人の文化となっている。

皆さんは、このような桜を愛でる文化の中に最近新しいジャンルのものが登場していることにお気づきだろうか。それは「桜ソング」である。近年、春になれば「春・桜・卒業」などのキーワードともに歌番組が行われるようになった。歌番組好きな私としては見逃せないイベントである。その中で登場する曲の中でも桜をテーマとした曲は、「桜ソング」として紹介される。先日行われていた歌番組の中でも多くの桜ソングが登場し、コブクロの「桜」やケツメイシの「さくら」などが「桜ソング」の先駆的な曲として紹介されていた。このように桜がJ-POPと関連付けられたことは、桜が人々のより身近なものの中に組み込まれてきた証拠といえるのではないだろうか。卒業・入学といったハレの場でもなく、花見といったコミュニティを必要とする社会的イベントでもなく、桜は日本人にとってよりプライベートで日常的な存在となったのである。いや、そうなったからこそJ-POPに桜が組み込まれたともいえるかもしれない。

神聖であった花見が大衆の娯楽となり、「桜ソング」というよりプライベートな楽しみ方も確立された。桜は今後も私たちの生活の至る所で関連付けられ、日本人の春の生活はさらに桜に囲まれたものとなるかもしれない。私は大学卒業という人生の節目を迎え例年と一味違う桜の季節を感じながら、こんなことを考えていた。

szk

 

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