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教員コラム(3)レポートについて(木村)Faculty Colum (3) About Reports (Kimura)

先日、1年生に向けて「レポートとは」という話をする機会がありました。その時に書いたものを、もったいないのでここに載せておきます。(かなり厳しい話もするが/俺の本音を/聴いておけ・・・元ネタはまわりのおじさんにききましょう)
なお、あくまで私見です。教員によっても考え方の違いはありますので、そのへんはご了承ください。

 

1. レポートとは・・・論文の一歩手前

  • 論文は、当該テーマに関して、いままでに出されてきた説・主張よりも、より妥当だと考えられる説を、根拠・証拠に基づいて提示するもの。
    • (例)「シングルマザーの貧困」という問題は、X年頃から社会的な問題となってきた。これに対して、統計にもとづいて、まずAという主張がなされ、次いでそれを批判する形でBという主張がなされ、ついでインタビューにもとづいてCという主張がなされ、それらをまとめる形でDという主張がなされている。このDという主張はきわめて妥当性が高いように思えるが、Eという点は十分に考慮されていないという問題がある。そのため自分はこのEという点について調査を行い、その成果にもとづいて、Fだと主張をする。
  • レポートは、当該テーマに関する現在の状況や、いままでに出されてきた説・主張を整理し、そのうえで自分の考察(≠感想)を加えたもの。
    • (例)上の例でいけば、「…考慮されていないという問題がある。それゆえ、Eについての調査が必要だと考える。」まで。感想でなく考察を。そのためには諸説の比較や妥当性の検討、問題点の指摘(とその妥当な根拠)などが必要。

2. レポートの準備

  • 資料を集めよう
    • レポートは「頭で考えたことを書くだけでOK」というものより、複数の文献・資料を読んで整理するほうがよいものの方が多い。だから課題文献が決まっている場合以外は、自分で文献・資料を探そう。
    • 資料:自分の議論の道筋を補強してくれるもの。自分の議論がたんなる自分の妄想ではなくて、妥当性のある議論だということを読み手に示すもの。
      1. 証拠として使う(事実あるいは主張)
      2. 議論をまとめたり分析したりするための理論的枠組みをえる
      3. 他の文献の議論のおかしい点を指摘することで、自分の正当性を強める

      ⇒根拠になるには、文献自体の客観的な信頼性が必要。⇒だから、まず学術書から探そう。

    • 図書館でキーワード検索して、関連していそうなものに複数、目星をつけ、実際に開いて読んでみる。必要な部分をメモする。そして、その本に引用されている、関係していそうな文献を芋づる式に探そう。
    • また、統計資料はできるだけ発行元から引用しよう(孫引きはなるべく避ける)
  • 文献の超・大まかな信頼度
    • 学術書:○ 文献表があり、引用が適切になされているものの場合、主張がすでに他の文献に補強されていると考えられるので、信頼性が比較的高い。ただし、そこに書いてあることを100%真理として受け止める必要はない。正しいかどうかつねに理性を働かせて考える。不十分なところ=新たに研究してより正しい答えを見つけるところ
    • 学術論文:〇、ただし注意が必要。きちんとした学術雑誌の場合、掲載された論文は、査読=同じ分野の研究者によるチェックを経ているので、より信頼性が高い。それに対して紀要などの場合は査読なしのことが多いので、もちろんよい論文もあるが、なかにはほぼ妄想というものもある。そしてciniiなどの検索サイトではわりと紀要掲載論文が見つかりやすい。
    • 一般書(学術書風のものを含む):△ 上の紀要と同じで玉石混交なのでよく読んで判断を。主張に客観的な根拠が示されていないものも多い。
    • ウェブサイト:△ ものによる、というのが正直なところ。官公庁が統計等をウェブで公開していることもるし、新聞のウェブ版などもあるが、誰が書いているのか分からない・いつまで残っているか分からないウェブサイトもあるので、要注意。
  • 資料を読んで整理しよう
    • 複数の資料でクロス・チェックすることで、自分の議論の妥当性を高める
    • 複数の主張をマッピングし、そこに自分の議論を位置づける。
  • そのうえで考えてみよう
    • 考察については「1. レポートとは」参照。長い考察を書くのも練習です!

3. レポートの形式

  • 冒頭にはタイトル、講義名、学籍番号、名前
  • 内容のまとまりに応じて章、節にわける。章にはタイトルをつける

 

 (例)アフリカにおける貧困

1. はじめに (問題設定。本レポートでなぜ・何を扱うか)

        2. アフリカにおける貧困問題の概況

                        2.1 国ごとの状況

                        2.2 貧困に伴って起きる問題

                        2.3 国際機関による取り組み

                        2.4 事例:ナミビアにおける学校プロジェクト

       3. 考察 (なぜナミビアのプロジェクトは成功したのか、そこから考えて 今後アフリカの貧困対策はどのように進めて行くべきだと考えるか等)

                 4. おわりに (レポートでやったこと、やれなかったことを振り返ってまとめる)

        5. 参考文献

 

 

 (例)スマホは若者の読書時間を減らしたか

        1. はじめに

          1.1 問題設定

          1.2 国内の状況

                       1.3 国際的な状況

        2. スマホの利用と若者の読書時間の関係

          2.1 文科省の報告書による見解

          2.2 教育学者Aによる批判

2.3 社会学者Bによる見解

          3. 考察 (2章で取り上げた節を比較検討し、そのうえでどう考えるのがより妥当か、
                 あるい は議論に何が欠けているか、などを論じる)
            
4. おわりに
      
5. 参照文献
 

4.文献の引用について

  • 学術的な書き物においては、誰が考えたのかというのはとても大事です。人が考えたこと、書いたことを、さも自分が考えたり書いたりしたことのように扱ってはいけません(学術の分野で最大の罪です)。誰か別の人の考え・言葉をつうじて自分の意見・議論を補強する場合は、きちんとその部分が分かるようにしましょう。
  • そのままもってくる場合(1):証拠をまさしく文字通りもってくるもの。その部分を「 」で括り、註ないしは文中に、誰のどの文献からの引用かを示す。文中の場合、例えば[著者の姓 出版年:頁数]。注の場合は[1]。また「 」内は、もとのものを一字一句変えない。
  • そのまま持ってくる場合(2):長い時(3行ぐらい以上続いてしまいそうなとき)は、一行あけ、頭を下げてその文章(そのまま)を書く。
  • 内容を要約したり言い換えたりして引用する場合:これについて、~~~と言っている[徳丸 200835]。

 

5. 文献表

  • 引用文献について、註で書誌情報を示す場合:文献表は必要でない
  • 〃、[徳丸 2002]のような形で示す場合:文献表は必要。文献表の形式はいろいろあるが、(1)必要な情報が出されていること(著者名、出版年、タイトル、出版社名。もし雑誌掲載論文や本の一部の場合は、そのタイトル(論文は「 」、本や雑誌タイトルは『 』で括るのがルール)とはじめと最後のページ。翻訳の場合は訳者名)(2)その文章では統一した形式をとっていること、の2点が守れていれば問題ない。
  • ウェブページを引用することもできる。その場合、文献表には、ページ(ないし記事)タイトル、URL、最終閲覧日時を記載すること。

 

 


[1]示し方の例…著者名、『タイトル』出版社、ページ。文中の場合は「・・・」[徳丸 1995312]のように、引用のあとに誰のどの文献か分かるように、著者名、出版年、ページ番号を示し、そのうえで文末に文献リストをつける。

 

 

 

 

 

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